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天狗の赤ふん



・・・・・・・・・・・第4話・・・・・・・・・・・

ありさは

「あれはふんどしのように見えるが、実はふんどしの形をしたお守りだった」

などと適当な嘘を並べながら、灰をかき集めました。

すると驚いたことに、灰のついた手の指が見えなくなりました。

「にゃっ!どうやら、赤ふんの効きめは灰になってもあるみたい〜!わ〜い!」

ありさはさっそく着物を脱いで身体に塗ってみました。

「ちょっと恥ずかしいけど、見えなくなるからいいもんにゃぁ〜」

塗ったところから、しだいに透明になっていきます。

身体中塗り終えると、ありさはすっかり見えなくなっていました。

「よし、これで大丈夫だにゃぁ〜。さっそくとなりの町へ遊びに行こう」


町はさすがににぎやかで、たくさんのお店が並んでいます。

村で育ったありさにとってはどれも珍しいお店ばかりです。

ふと、団子を売っているお店がありさの目にとまりました。

「にゃっ、おいしそうだなぁ〜!おなかがすいて来たし〜」

ありさは店の軒先に並べてある団子を一串つまんで食べました。

団子が宙に浮いて消えていくのを見ていた店のあるじは、驚きのあまり腰を抜かしてしまいま

した。

「次はどこに行こうかなあ〜?」


しばらく歩くと、昼間から酒を飲ませている店がありました。

「ふにゅ?お酒飲んでるぅ〜。うちのおっとうもお酒好きだし、おとなはどうしてお酒を飲むんだ

ろうにゃぁ〜?そんなにおいしいものなのかにゃぁ〜?」

ありさはさっそく、お客の横に座ると、徳利の酒を横取りしました。

それを見たお客は「わっ」と悲鳴をあげました。

「ひぃ〜!みっ、見ろ!めっ、目玉が、わしの酒を飲んでるぞ!」

赤ふんの灰は、目玉にだけは塗ってなかったのです。

「ば、化け物め、これでもくらえ!」

お客は、そばにあった水をありさにかけました。

するとどうでしょう。

身体に塗った灰がみるみる落ちて、すっ裸のありさが姿を現しました。


「な、なんとっ!裸のねこみみ娘が現れやがったぞ〜!」

「きゃぁ〜〜〜〜〜!!恥ずかしぃぃぃ〜〜〜〜〜!!」

「おまえ、もしかして化け猫か!?それともキツネ憑きか!?

こらしめてやるからじっとしてろ〜〜〜!!」

「私、化け猫でもキツネ憑きでもないよ〜!」

「身体を隅から隅まで調べれば分かることだ!それっ!」

「きゃぁ〜〜〜〜〜!!ごめんなさい!!ゆるして〜〜〜〜〜!!」


捕まる前に辛うじてありさは店から逃げ出しました。

町の中をかき分けるように裸で走り抜けていくありさの顔は、恥ずかしさのあまり真っ赤にな

り、それを見ていた人々は「まるで天狗のようだ」と口々に言いました。


家に帰った後もありさの赤ら顔はずっと取れず、生涯赤い顔のままで過ごしたと言うことです。




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